空中カボチャ計画:小型品種「プッチーニ」の棚栽培で省スペース化を図る。
カボチャ栽培のスペース問題

カボチャは貧栄養な土地でも力強く生育するため、初心者でも成果を得やすい作物です。さらに果実の保存性に優れ、高温多湿を避ければ夏に収穫してから冬至まで保管できます。

しかしカボチャを栽培するにあたり、栽培面積の問題が立ちはだかります。生育旺盛な蔓が2m以上伸びるため、地面を這わせると他の作物のスペースに侵入したり、通路を蔓で埋め尽くしてしまったりといった弊害が生じます。そのため家庭菜園にカボチャを導入すると、蔓を伸ばすスペースを確保するために他の作物の定植を諦めなければならないこともあるでしょう。
棚栽培で省スペース化

そこで省スペース化のため、カボチャを棚栽培する方法があります。蔓を地面に這わせるからスペースを食うのであって、ネットを張った棚へ誘導して空中に這わせてやれば、水平方向の展開を抑えられるはず。うまく誘導すれば、棚に張ったネットの上に結実する「空中カボチャ」が作れるでしょう。
実際に個人のブログやSNSなどで、マンションのベランダに棚を作ってカボチャを栽培している例も時々見かけます。ベランダでなくとも、棚栽培で省スペース化できれば、小さい農地にカボチャを密植して面積あたりの収量を上げられるかもしれません。
さらに、カボチャを棚栽培するメリットは省スペース化以外にも考えられます。
- 土や雨水の跳ね返りが届きにくくなるため、土壌に由来する病害虫の被害を緩和できる。
- 果実の側面や下部にも日光が当たりやすくなるため、色付きが良くなる。
- カボチャの葉を日よけ・雨よけ代わりにして、下に山野草などの鉢植えを置ける。
一見いいことづくめのようですが、メリットしかないのであれば既に世界中のカボチャ農家が棚栽培に切り替えているはずです。そうならないのは、資材コストや作業性の悪化などのデメリットもあるからでしょう。
実際にカボチャを棚栽培しよう
ここまではあくまで推測の話なので、実際に検証してカボチャ棚栽培の実用性を議論したいと思います。同じ品種を棚へ誘導した場合と地面を這わせた場合で、生育速度、病虫害、収量、果実外観を比較します。また、棚栽培に必要な資材のコストや、体感的な作業性にも着目してみましょう。
育てる品種は、サカタのタネが発売している小玉品種「プッチーニ」です。
![]() | かぼちゃプッチーニ7粒実咲サカタ交配価格:445円 (2020/6/10 23:39時点) 感想(3件) |
果実サイズは掌に乗る程度で、温かみのある橙色に熟します。電子レンジで温めるだけで食べることができ、料理に彩りを添える一品として、あるいは一人暮らしで手軽に使えるカボチャとして需要があります。今回は棚に這わせるため、重さを考慮して小玉の品種としました。

3月下旬、一晩吸水させた種子を育苗用土を詰めたポットに撒き、5mmほど覆土しました。室内の小型温室で15℃以上で維持されるよう加温したところ、1週間程度でほとんどの種が発芽しました。
並行して畝の準備と栽培棚の設置。堆肥、石灰、草木灰を撒いた土をよく耕し、長さ2m強の畝を立ててシルバーマルチで覆いました。カボチャに肥料を与えすぎると、蔓ばかり伸びて着花しない「蔓ぼけ」という状態になります。そのため元肥は控え、生育状況を見ながら化成肥料を少量ずつ加える方針にします。
![]() | 【あす楽対応・送料無料】トヨチュー園芸化成800G価格:590円 (2020/6/10 23:41時点) 感想(0件) |
棚はトマト栽培用の雨よけを流用し、雨よけの代わりにネットを張りました。カボチャは花の摘み取りや人工授粉などの作業があるため、棚の下に入って作業しやすいよう、なるべく大型の製品を採用しています。
![]() | 【送料無料】daim 雨よけ 家庭菜園用 雨よけセット ワイドタイプ(間口190cm)【小型 トマト 雨よけ 雨除け 霜よけ 防虫 防鳥 園芸 家庭菜園】価格:5,480円 (2020/6/10 23:43時点) 感想(27件) |
棚の下の畝上にトンネルを設置し、植え付け場所の準備は完了です。

5月中旬、本葉5枚くらいに育った苗をトンネル内に移植しました。蔓を横に這わせないため、株間はカボチャとしてはかなり狭い20cm程度。棚栽培と密植の組み合わせが吉と出るか凶と出るか、楽しみです。

植えつけ後の成長は良好

カボチャの葉がトンネル内いっぱいに満ちてきたら、トンネルを外す目安です。6月4日にトンネルを外した時点で、定植した苗は全て生存していました。生育速度に若干の差があるため、同程度の大きさの苗どうしで、地面に這わせた場合とネットに誘引した場合の生育・収量を比較してみる予定です。
カボチャの蔓の仕立て方
カボチャは親蔓から子蔓、子蔓から孫蔓が分枝するため、どの蔓を伸ばすのかを決めて仕立てなければなりません。親蔓1本だけをまっすぐ伸ばす方法、親蔓の先端を摘んで子蔓を伸ばす方法などがあるので、品種によってどの仕立て方が適しているのかあらかじめ確認しておきましょう。
サカタのタネのHPによると、プッチーニは親蔓を摘芯して子蔓2〜3本仕立てにするのが適しているようです。今回は本葉5〜6枚目のところで頂芽を摘み取り、勢いの良い子蔓2本を選抜し伸ばす2本仕立てにしました。

すでに蕾が形成されていましたが、この時点では全て摘み取ってしまいましょう。カボチャやゴーヤなど雌雄異花のウリ科植物は、生育初期に雌花をたくさんつける傾向があります。さっそく花がついたと喜んで咲かせても、雌花ばかりなので受粉せず養分を消費するだけです。

これから子蔓が伸びてきたら、棚栽培のためネットへ誘引します。その後は脇芽除去、花の間引きなどの作業が日常になるでしょう。いよいよ雄花と雌花が両方咲き始めたら、早朝の人工授粉。空中カボチャを実らせるまでの道はまだ長そうです。