フェンネルの一年:夏撒き栽培で大球収穫

2018年にフェンネル(ウイキョウ)の栽培に挑戦し、収穫まで到ることができました。栽培の様子と注意点、そしてフェンネルの調理方法をまとめます。

フェンネルとは

甘く涼しげな香りを放つ「魚のハーブ」

フェンネル(別名ウイキョウ)は、地中海沿岸部で栽培化されたセリ科の多年草です。人類が農業を始めた初期の頃から利用されていたと考えられており、栽培植物の最古参のひとつです。

フェンネルを特徴付けるのは、その特徴的な香りです。全草にアネトールという精油を含み、葉を揉んだり切ったりすると甘く涼しげな香りが漂います。この香りが食欲増進や肉・魚の臭み消しに重宝されたため、フェンネルは古くからヨーロッパや北アフリカで薬草および香味野菜として使われてきました。特に魚料理との相性が良く、「魚のハーブ」とも呼ばれています。

株元はみずみずしく、葉先はフサフサ、花は黄色い放射状

フェンネルは地表からまっすぐ葉を伸ばします。葉の付け根は白菜のように肥大し、品種によっては直径15cmくらいの球形に膨らむことも。肥大した付け根は水分を多く含み、包丁で切るとみずみずしい断面からアネトールの芳香が香ります。

なお、この肥大した部分を「茎」と呼んでいる文献もありますが、解剖学的には「葉の付け根」です。では茎はどこなのか。フェンネルの葉を一枚一枚剥ぎ取っていったとき、最後に残る硬い土台が本来の茎です。つまり株元に小さく短い茎があり、それを葉が包み込んでいるということ。料理をする人ならピンと来るかもしれませんが、白菜やタマネギと同じ構造です。

葉の先端は細く何度も枝分かれしており、房毛を寄せ集めたようなフサフサした姿が特徴的です。この葉にも精油が詰まっており、柔らかな葉先を軽く撫でるだけでも馥郁とした香りが楽しめます。

フェンネルは初夏に抽台し、黄色い花を放射状にたくさん咲かせます。株元からヒョロりと伸びた花茎の先が放射状に分かれて、分かれた先が再び放射状に分かれ、その先に花をつける形はあたかも黄金色の打ち上げ花火のよう。

花が終わった後には、「フェンネルシード」とも呼ばれる長楕円形の果実ができます。この果実も葉と同じ香りを含むため、お菓子の香りづけや食後の口臭消しに使われます。

多年草なので何年も収穫し続けられる

フェンネルは多年草であり、日本でも露地で越冬できます。そのため株元から抜かないかぎり、翌年も葉を繁らせて収穫を続けることができます。毎年育苗する必要がないので、一度丈夫な株を育ててしまえば何年も恩恵を受けられるのです。

ただし、越冬株は開花と結実に養分を取られているので、株元を太らせて葉物野菜として使うのはあまり期待できません。越冬させて何年も育てるのであれば、あくまで葉先や果実を採るための株と割り切った方が良いでしょう。

フェンネルの多様な使い途

株元は太くみずみずしく、葉先は細くフサフサ。部位によって形が大きく異なるため、料理での使い分けが楽しい野菜です。フェンネルを入手したら葉先と株元に切り分け、料理によって使い分けてみると良いでしょう。

葉の部位ごとの用途例

株元はセロリや白菜と同じ要領で使えます。刻んでスープに入れれば独特の香りが際立ち、肉や魚の良い引き立て役になります。また、みずみずしく歯応えがあるので、新鮮なものはそのままサラダにしても良いでしょう。

葉はハーブとして、肉や魚の上に散らしたり、スープの香り付に少し加えたりと様々な料理に加えてみてください。葉を花瓶に挿しておいて、必要なときに必要な量だけ先端をちぎって料理に加える、という使い方もオシャレです。

果実は生薬に使われる

フェンネルの果実を乾燥させたものが生薬「茴香(ウイキョウ)」です。現在も日本薬局方に収載されている歴とした生薬であり、安中散の配合にも使われています。

医薬品に使われる植物は、食品に入れても良いもの・良くないものの線引き(食薬区分)が定められており、これを守らないと薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律;旧薬事法)に抵触します。ではフェンネルはどうかというと、「医薬品的効能効果を標ぼうしない限り医薬品と判断しない」、つまり薬としての効果をうたわなければ、食品として人に提供しても良いとされています。よって、料理にフェンネルの果実を添えて客に提供したからといって、薬機法違反でしょっ引かれる心配はないのです。

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