フェンネルの一年:夏撒き栽培で大球収穫

フェンネルの栽培記録

2018年7月、フェンネルの栽培を開始しました。わざわざ7月の暑い盛りに栽培を始めたのにもしっかり理由があるので、夏撒き栽培のメリットや注意点を紹介していきます。

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今回使用した種です。

夏撒き栽培で「とう立ち」を防ぐ

今回夏撒き栽培にした理由は、「とう立ち」を防いで株元を太らせるためです。花茎(花をつけるための茎)がヒョロりと高く伸びることを「とう立ち」といいますが、こうなってしまうと花に養分を取られてしまい、株元の肥大成長が進みにくくなります。そのため葉や株元を食べる野菜を育てる場合、いかにとう立ちを防ぐかが収量・品質向上の鍵になります。

とう立ちが発生するかどうかは日の長さが影響します。植物は決まった季節に花を咲かせるため、日照時間(正確には連続した暗期の長さ)を感知して季節を知る仕組みを備えています。たとえば初夏に花を咲かせる植物は、日照時間が伸びてきたら(連続暗時の長さが一定以下になったら)花芽を形成します。逆に秋に花を咲かせる植物は、日照時間が短くなってきたら(連続暗時の長さが一定以上になったら)花芽を形成します。花芽が形成されると花に養分が回されるので、葉や茎の成長が緩慢になります。

フェンネルは初夏に開花する植物、つまり日照時間が伸びてきたのを感知して花芽を形成する植物です。ということは、日照時間が短くなってゆく夏至以降に栽培すれば、花芽は形成されにくくなり株元を太らせることができるのでは。このように考え、夏撒き栽培としました。

フェンネルの栽培スケジュール

栽培スケジュールは以下の図の通りです。

7月第1週、畑の土をよく耕して石灰を撒きました。地中海沿岸〜コーカサス地方が野生分布地であるフェンネルは、中性〜アルカリ性の土壌を好むためです。石灰を撒いた2週間後、畝を立ててマルチを敷き、株間15cmくらいになるよう播種しました。

育苗初期は直射日光や虫害から守るため、畝を寒冷紗で覆います。播種したマルチの上にトンネル支柱を50cm間隔くらいに並べ、寒冷紗を被せてパッカーで固定しましょう。

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寒冷紗や遮光シートを支柱に固定するための、トンネルパッカーという部品。様々なサイズを用意しておくと便利です。

畝に寒冷紗を被せるときは、下の図の手順を踏みます。まず広めの幅でトンネル支柱を立てておき(②)、寒冷紗を被せ(③)、寒冷紗を上から押さえるようにトンネル支柱を追加する(④)と風で外れにくくなります。

播種から1週間ほど経過してから一斉に発芽が始まりました。子葉の時点ではありふれた双子葉の姿をしており、まだ糸状の葉ではありません。ここからさらに1週間程度で糸状の本葉が出始め、株が徐々に太ってきます。

夏に種を撒くというスケジュールのため、発芽直後は非常に乾燥しやすく、毎日の水やりが欠かせません。しかし一方で、激しい夕立に遭うと種や芽が流されてしまうこともあります。今回育てた株は乾燥や豪雨で次々と脱落し、最終的には8株育てたうち2株しか生き残りませんでした。特に雨によるダメージは無視できず、寒冷紗の穴や隙間から吹き込んだ風雨によって芽が折られてしまう自体が続出しました。

夏の乾燥と豪雨の両方から守ためにも、寒冷紗のメンテナンスは欠かせません。

フェンネルの発芽(2020年7月20日)

あるいは、室内で育苗してから定植すれば生存率が上がるかもしれません。ただしフェンネルは植え替えを嫌うらしいので、定植後の生育が緩慢になることを想定して早めに育苗を始めた方が良いでしょう。次回栽培する時は育苗してから定植する方法も試してみます。

害虫と病気

フェンネルについたキアゲハの幼虫。まれにこのような水色の個体が出ます(2019年10月2日)

病気には極めて強いのですが、夏から秋にかけてキアゲハの幼虫アブラムシがよくつきます。特にキアゲハの幼虫は食欲旺盛なので、小さい株が丸坊主にされてしまわないためにも寒冷紗での防御が大切。寒冷紗が剥がれていないか、時々点検しましょう。

十分育った株でも、葉先が食い尽くされると見栄えや使用価値が下がってしまいます。幼虫はこまめに取り除き、あまりに被害が大きいようなら薬散も検討してください。

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アブラムシやハダニの対策に。
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アオムシやヨトウムシの対策に。
キアゲハ成虫。水色の幼虫も、羽化すれば普通の模様に。

幸い、今回は株を枯らしてしまうほどのキアゲハの食害はなかったので殺虫剤を撒くまでもありませんでした。キアゲハの幼虫はセリ科植物の葉を好んで食べ、フェンネルでも育てられます。どうせ取り除くなら、持ち帰って飼育し羽化させてみても面白いでしょう。

8月下旬から葉先を収穫

寒冷紗の中に収まらなくなったフェンネル (2020年8月22日)

フサフサの葉が寒冷紗の中を満たすまでに成長したら、もうちょっとやそっとのことでは枯れません。地中では太い直根ががっしりと根を張り、地上がカンカン照りであろうが地下の水分を吸ってくれます。ここまで育ったら寒冷紗を外しても放任的に育つので、栽培の労力は劇的に減ります。

まだ株元は肥大していませんが、葉先をハーブとして使う場合は8月下旬から随時収穫できます。葉の先端をちぎっても瞬く間に新しい葉が展開するので、料理の香りづけに添える程度であれば1人1株もあれば十分量採れるでしょう。

秋から冬にかけて株元が肥大

株元が徐々に肥大してきた(2020年9月1日)

9月に入った頃から株元が徐々に肥大してきました。夏至をすぎてから育て始めたのが功を奏し、とう立ちせずに株元へ養分が回ったのだと思われます。今回は元肥だけで十分育ちましたが、もし葉が黄色くなったり株が徒長したりするようなら、株元へ化成肥料を撒くと良いでしょう。

1kgくらいに肥大(2020年1月)

11月にもなるとカブのように丸く肥大し、葉物野菜として収穫・利用できるようになりました。一度に根元から刈り取っても良いのですが、葉を1枚ずつ株元から切り離して残りの葉を残しておくことで、1株から何度も収穫することもできます。ただし、この場合は株元で分げつ(数本の小さい株に分かれて生えること)しやすくなります。

フェンネルは屋外で越冬可能

冬を越し、新しい葉を出した株(2020年5月25日)

フェンネルは多年草なので、株元から完全に収穫してしまわないかぎり毎年葉を繁らせて花を咲かせます。株元から刈ったつもりが茎が生きていて、復活した株から種がこぼれ増殖することもあります。

冬の間は地上の葉が黄色っぽくなりますが、3月下旬ごろになると再び青々とした葉を繁らせてくれます。生育が悪かったり葉が黄色いままだったりする場合は、春先に化成肥料を加えると良いでしょう。

播種した翌年の夏に開花

フェンネルの花(2020年6月28日)

6月中旬、葉の合間から花茎が伸びて「とう立ち」しました。二十四節気でいうところの「芒種」から「夏至」の間なので、日の出から日の入りまでの時間は大体14時間くらい。このくらいの日の長さになると、花芽が形成されるようです。するとやはり、夏至をすぎてから種を撒くというスケジュールはとう立ちを防ぐ上で有効だと思われます。

蕾が徐々に黄色く色づき、6月下旬に黄色い花を放射状に咲かせました。空中に浮かぶ様子が打ち上げ花火のようです。この花が散った後、果実がラグビーボール形に肥大します。この果実も「フェンネルシード」と呼ばれハーブとして使われるので、ぜひ収穫まで経験したいと思います。

フェンネル栽培まとめ

  • 葉先、株元、果実のいずれも芳香をもつ香味野菜
  • 株元を肥大させるなら夏至をすぎてから種を撒き、寒冷紗で保護する。
  • 8月下旬から葉先を、秋から株元を収穫できる。
  • 露地で越冬し、多年草として栽培できる。

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